本の概要
魔女の手ほどきとはーーーー。
梨木香歩さんの『西の魔女が死んだ』は、学校に行けなくなった中学生の「まい」と、イギリス人の祖母(まいが「西の魔女」と呼ぶ)とのひと夏を描いた物語です。
祖母の家で過ごす日々の中で、まいは自然と向き合い、生活のリズムを取り戻しながら、自分の力で生きる方法を学んでいきます。
派手な事件や展開はありません。けれど、祖母の静かだけど力強い言葉や暮らしぶりは、読者の心に深く染み込むように残ります。生きることの「基礎体力」をどう身につけていくかを優しく描いた作品です。
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印象に残った言葉
意志の力をつけることの難しいのは、それに挑戦するのが意志の力の弱い人の場合が多いので、挫折しやすいということですね
この言葉は、とても正直で厳しいけれど、それ以上に温かさを感じました。挑戦すること自体に意味があり、弱さを抱えながらも歩む姿を肯定しているように思えます。
自分が楽に生きられる場所を求めたからといって、後ろめたく思う必要はありませんよ。サボテンは水の中に生える必要はないし、蓮の花は空中では咲かない。シロクマがハワイより北極で生きるほうを選んだからといって、だれがシロクマを責めますか
生きる場所を選ぶ自由を優しく肯定してくれる言葉。自分に合わない環境を無理に選ぶ必要はなく、それぞれがふさわしい場所で生きればいい。読んでいて心がほどけるような安らぎを感じました。
読んで感じたこと
本作は、「死」を真正面から描くのではなく、「死を受け入れながら生きる」ことを描いていると感じました。
祖母が教えるのは特別な魔法ではなく、自然の中での暮らしや、自分で考え自分で決める習慣。日々の積み重ねこそが、心を整え、生きる強さを養うのだと思いました。
また、祖母と孫のやり取りには、血のつながりを超えた「信頼と愛情」の温かさがあります。
静かで穏やかな文体が、その空気感を一層際立たせています。
さらに、祖母が作ってくれたキッシュの場面は強く印象に残りました。シンプルだけど滋養に満ちた料理が、まいにとって心と体を支える力になっていたように、読んでいる私自身も「食べること」が生きる力の根っこにあるのだと感じました。思わずキッシュが食べたくなりました。
まとめ
『西の魔女が死んだ』を読み終えたとき、胸の奥にじんわりと温かさと切なさが残りました。
祖母の死は避けられないものですが、まいに託した生きる力は、物語を越えて読者にも伝わってきます。
現代の忙しさや喧騒の中で、忘れがちな「暮らすことの基本」を見直させてくれる一冊です。
読み終わったあと、自分自身の「生きる力」について静かに考えてみたくなりました。
あなたの「生きる力」はなんですか?
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