ー目に見えないものの中にある真実ー

サン=テグジュペリ『星の王子さま』文庫本表紙 読書記録

『星の王子さま』サン=テグジュペリ【あらすじ・感想・考察】

大人になると、いつの間にか“見えるもの”ばかりを信じるようになる。

けれど、ほんとうに大切なものは、目には見えないのかもしれない。

サン=テグジュペリの『星の王子さま』は、

そんな当たり前のことを、やさしく思い出させてくれる。

今回は、物語の中の印象的な言葉から、

「見えない価値」について静かに考えてみます。

あらすじ(ネタバレなし)

サハラ砂漠に不時着した“ぼく”の前に、ひとりの少年が現れる。

彼は遠い星からやってきた“王子さま”。

自分の星で大切にしていた一輪のバラとの関係に悩み、

その意味を確かめるために旅をしているのだという。

王子さまは旅の途中、さまざまな“大人たち”と出会う。

権力にこだわる王様、数字に囚われたビジネスマン、

誰かを愛することを忘れてしまった人々。

そのひとりひとりとの対話を通して、王子さまは気づいていく。

本当に大切なものは、目に見えないのだと。

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印象に残った言葉と考察

いちばんたいせつなことは、目に見えない

この言葉は、『星の王子さま』を象徴する一文。

目に見えるもの、わかりやすいものばかりに価値を置く世の中で、

私たちはしばしば“見えないもの”を軽んじてしまう。

信頼や、思いやり、時間をともにした記憶。

それらは目には映らないけれど、確かに人を支えている。

見えないからこそ、感じようとする心が必要なのだと思う。

金持ちでいられると、なんの役に立つの?

王子さまの問いかけは、あまりに素朴で、そして鋭い。

彼にとって「お金」とは、“数えられるもの”ではなく、

“誰かのために使えるもの”であってほしかったのかもしれない。

豊かさの意味を、私たちはいつの間にか見失っていないだろうか。

“持つこと”よりも、“どう使うか”。

王子さまの言葉は、そんな当たり前のことをもう一度思い出させてくれる。

きみがバラのために費やした時間の分だけ、バラはきみにとって大事なんだ

この言葉は、愛という行為の本質を示している。

相手を思い、世話をし、心を注ぐ。

その積み重ねが「特別」を生む。

効率や結果を重視する社会の中では、

“時間をかけること”が無駄に見えることもある。

けれど、誰かのために過ごした時間は、

そのまま自分の中に温度として残っていく。

愛は、時間の中で静かに形づくられるものなのだ。 

たとえば、きみが夕方の四時に来るなら、ぼくは三時からうれしくなってくる

この一文には、待つことの幸福が描かれている。

愛することとは、相手が目の前にいない時間をも含めて、

その存在を感じながら生きること。

期待と不安、静かな喜び。

そのすべてが、愛の一部である。

「待つ」という行為の中に、人は確かに生きている。

感想・考察

『星の王子さま』を読み返すたびに思う。

この物語は、子どもに向けて書かれたようでいて、

むしろ“大人のための本”なのだと。

日々の忙しさの中で、

見えないものを感じる力を少しずつ失っていく。

けれど、王子さまの言葉はその感覚を取り戻させてくれる。

「たいせつなことは、目に見えない」。

それは決して抽象的な理想ではなく、

誰かを想う時間、何かを信じる心、

そうした小さな積み重ねの中にこそある。

静かな夜に読むと、胸の奥が少しだけ温かくなる一冊です。

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