恋をすることに、少し臆病になった大人たちへ。
尾形まりこさんの『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。』は、忘れかけた恋のときめきや、自分を取り戻す強さを思い出させてくれる一冊です。
ページをめくるたびに、「もう一度、自分を愛していい」と背中を押されるような言葉が散りばめられています。
本の概要
・著者:尾形真理子
・出版社:幻冬舎文庫
・発売日:2017年
広告コピーライターとしても知られる尾形さんが綴る恋の言葉たちは、短くても深く刺さる。
日常の中の何気ない瞬間や、過去の恋をふと思い出すような情景を通して、「恋とは何か」「自分を大切にするとはどういうことか」を静かに問いかけてきます。
印象に残った言葉
自分にとっての『いい人』は、自分で決めるしかないのだから
恋をしていると、どうしても「他人の目」や「世間の正しさ」を気にしてしまう。
でも、本当に幸せを感じるのは、誰かが「いい」と言った人ではなく、自分が「この人がいい」と思える人といるとき。
この一文を読んだとき、恋の判断基準を他人に委ねてきた自分の過去が、静かに胸の奥でざわめきました。
ちゃんと欲しがる女ほど、欲しがられる女になる
この言葉には、少しドキッとします。
「欲しがる」ことは、わがままでも依存でもなく、自分の願いを正直に認める勇気のこと。
我慢や遠慮を美徳とする社会の中で、「私はこうしたい」と言える女性ほど、まっすぐに輝いて見える。
恋愛だけでなく、生き方全体に響くフレーズです。
感情は、年を取らないのかもしれない。対処の仕方が大人になっていくだけで
どんなに大人になっても、恋をすると胸が高鳴り、嫉妬したり、不安になったりする。
それは、感情が老けない証拠。
ただ、昔より少しだけ上手に、自分を守りながら人を想えるようになる。
この言葉に、恋する大人の優しいリアルが詰まっています。
人と違うのが『個性』ではなく、自分らしいのが『個性』なんだ
この一文は、恋にも人生にも通じる真理。
「他人と比べないで、自分が心地いいと感じる選択をしていい」
そう言われたような気がして、肩の力がふっと抜けました。
自分らしくいることが、最も魅力的な生き方なのかもしれません。
感想と考察
この本を読み終えたあとに残るのは、恋の甘さでも切なさでもなく、「自分を大切にしたくなる」気持ち。
尾形さんの言葉は、まるで心の鏡のように、自分の奥に隠していた感情を映し出してくれます。
「恋」は、誰かにときめくだけでなく、自分自身と再び出会うためのプロセスでもある。
そんなことを教えてくれる一冊でした。


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