燃え殻さんの文章には、どこか懐かしい夜の匂いがします。
それは青春の終わりに感じた、少しの痛みと、どうしようもない優しさの混ざった空気。
『夢に迷ってタクシーを呼んだ』は、そんな「生きづらさ」と「それでも笑って生きる日々」を静かに描いたエッセイ集です。
本を閉じた後に、ふと自分の心の声が聞こえてくる——そんな一冊でした。
あらすじ
SNSや現代社会のスピードに巻き込まれながら、夢と現実のあいだで揺れる大人たち。
燃え殻さんは、自身の体験や日常の風景を通して、**「人はなぜ、それでも生きていけるのか」**を問いかけます。
芸能界、会社員生活、SNSの断片、過去の恋愛——どれもがリアルで、読者自身の記憶を呼び起こすような筆致。
タイトルの「タクシー」は、現実と夢の境界を行き来する象徴のように思えます。
印象に残った言葉
一瞬で世界を知ることができる代償は、一瞬で意欲を失うということかもしれない
情報が溢れる今、私たちは何でも“すぐに知る”ことができるようになった。
でも、知ることのスピードが、**「憧れる時間」や「探す楽しさ」**を奪っているのかもしれません。
努力の途中にある“もどかしさ”こそが、かつて私たちの原動力だった。
便利さの裏で、何か大切な感情を置き去りにしていることに、ハッとさせられる一文です。
この世に『生粋の社会人』なんているのだろうか。みんな『劇団社会人』に属していて、それらしく演じるのが上手い人と下手な人がいる、ただそれだけな気がしてならない
この比喩の鋭さとやさしさに、燃え殻さんらしさが滲みます。
社会に馴染めない自分を責めていた人も、「下手でもいい」と肩の力が抜ける。
“社会人”という役を完璧に演じる人なんていない。
誰もが少しずつ、台詞を噛みながら生きている——そう思えるだけで、少し生きやすくなります。
あの頃の僕には夢の希望もカネもなかった。ただ有り余る時間だけはあった。もしかしてその状態を、人は『青春』と呼ぶのかもしれない
青春とは「輝いている時期」ではなく、「何者にもなれない時間」なのかもしれません。
何も持たない不安と、何でもできる自由が、背中合わせに存在していた。
大人になった今振り返ると、あの空白こそが人生でいちばん豊かな時間だったのだと気づかされます。
燃え殻さんの淡い哀愁が、胸に沁みる一文です。
ツイッターのトレンドが数時間であっさり変わるように、誹謗中傷を浴びせた本人たちはすぐに忘れて、また新しい刺激に夢中になるのだろう
SNSの“残酷な早さ”を的確に切り取った言葉です。
忘れる側にとっては些細な一言でも、受け取る側には一生残る。
世界のスピードが上がるほど、言葉の軽さが増していく。
それでも燃え殻さんは、怒りではなく静かな悲しみとして描く——その距離感に、人間へのあたたかさを感じます。
感想・考察
『夢に迷ってタクシーを呼んだ』は、“現代を生きる大人”を、どこまでも優しく包み込む本です。
SNSの速さ、社会での演技、過ぎ去った青春。
どれも燃え殻さんの筆を通すと、切なさの中に少しの希望が宿る。
彼の文章は、傷ついた心に絆創膏を貼るようなやさしさがあります。
この本を読み終えたあと、夜の街を歩きながら、自分の“演技”を少しだけ脱ぎたくなる。
そしてふと、「まだ夢の途中にいるのかもしれない」と思えるのです。
まとめ
『夢に迷ってタクシーを呼んだ』は、燃え殻さんが描く“人生の中間地点”の物語。
夢も、仕事も、SNSも、全部少しだけ疲れてしまった人に読んでほしい一冊です。
この本は、「うまく生きられない人たち」への、静かなラブレターのようでした。
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