【感想・考察】辻村深月『傲慢と善良』ー結婚観と恋愛のリアルを描いた婚活小説

読書記録

「結婚はゴールではなく、スタートだった。」

ーー『傲慢と善良』は、そんな現実を突きつけてくる小説です。

婚活や結婚にまつわる悩みは、誰にとっても避けて通れないテーマです。

「理想の結婚相手とは?」「恋愛の延長に結婚はあるのか?」ーーそうした問いに真正面から挑んでいるのが、辻村深月さんの小説『傲慢と善良』です。

本作は、婚活で出会い、結婚を目前にしたカップルの関係が揺らいでいく様子を描きながら、結婚観や恋愛のリアルを鮮やかに浮かび上がらせます。

単なる婚活小説を超えて、人間関係の奥深さや、自分自身の「生き方」をも問われる物語。読めば必ず、自分の恋愛観・結婚観に新しい気づきが生まれるはずです。

本の概要(あらすじ)

辻村深月さんの『傲慢と善良』は、婚約者が突然失踪するという出来事から始まる長編小説です。

失踪したのは主人公・坂庭真実。彼女の婚約者である西澤架は、行方をくらました彼女を探しながら、自分たちの関係性や「結婚」というものの本質に向き合っていきます。

婚活を経て出会った二人は、周囲から見れば“順調“な関係に見えていました。しかし、その内側では、結婚に対する価値観のすれ違い、相手への期待や善意が知らず知らずのうちに重荷となり、互いを追い詰めていきます。

本作は、恋愛や結婚を単なる幸福のゴールとして描くのではなく、むしろその過程に潜む摩擦や矛盾を丁寧に描き出しています。婚活小説でありながら、普遍的な「人間関係の難しさ」や「生き方の選択」に深く切り込んだ物語です。

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印象に残った言葉

現代の日本は、目に見える身分差別はもうないですけれど、一人一人が自分の価値観に重きを置きすぎていて、皆さん傲慢です。その一方で、善良に生きている人ほど、親の言いつけを守り、誰かに決めてもらうことが多すぎて、“自分がない“ということになってしまう。傲慢さと善良さが、矛盾なく同じ人の中に存在してしまう、不思議な時代なのだと思います

誰の中にもある二面性を見抜いた言葉。自分も“善良”でありたいと思う一方で、知らぬ間に傲慢さを抱えていることにドキッとさせられました。

ピンとこない、の正体は、その人が、自分につけている値段です

婚活や恋愛だけでなく、人間関係すべてに通じる視点。無意識の自己評価が、相手選びや関係の質を左右しているのだと思います。

皆さん、謙虚だし、自己評価が低い一方で、自己愛の方はとても強いんです

耳が痛い一言。謙虚さの裏に隠れた強い自己愛は、自分の行動にも当てはまる部分があり、考えさせられました。

親の望んできた『いい子』が、必ずしも人生を生きていく上で役に立つわけじゃないんだよ

親の価値観に縛られてきた人にとっては救いになる言葉。誰のために生きるのかを改めて問い直させます。

みんな、自分のパラメーターの中のいい部分でしか勝負しないんだよ。自分の方が収入が低くても、外見が悪くても、相手より勝ってる部分にしか目が向かない。傲慢だけど、人ってそうゆうものじゃない?

誰もが無意識にやっていること。相手に対しても、自分に対しても、偏ったものさしで見てしまう怖さを感じました。

読んで感じたこと(感想・考察)

『傲慢と善良』を読んでまず強く感じたのは、結婚が「恋愛の延長線上」ではなく「現実と理想のせめぎ合い」だということです。

恋愛中はお互いの良い部分が前面に出やすく、「善良さ」を武器にして相手に尽くすことができます。しかし結婚生活では、長い時間を共に過ごすからこそ、小さなすれ違いや無意識の押し付けが積み重なっていきます。

辻村深月さんは、この「結婚生活のリアル」を決して美化せず、けれど冷笑的にも描かず、誠実に物語へ落とし込んでいます。

“善良さ“に隠された傲慢さ、そして“傲慢さ“の中に潜む誠実さーーその二面性は、人間関係を生きる誰もが持っているものだと感じました。

また、本作は単に「結婚観」を描くだけでなく、「生き方の選択」にもつながっています。婚活や恋愛の中で、自分の価値観や弱さに直面することは避けられません。相手に合わせすぎても苦しいし、自分を貫きすぎても関係は壊れる。そのバランスを模索する姿が現代を生きる私たち自身の姿と重なって見えました。

そして何より、自分の中にある「無意識の傲慢さ」に気づかされました。善良さの仮面をかぶりながら、実は相手に自分の価値観を押し付けてはいなかったかーー本作はそんな内面の矛盾を直視させる鏡のような存在でもありました。

まとめ

辻村深月さんの『傲慢と善良』は、婚活や結婚をめぐる理想と現実をリアルに描きながら、人間関係の本質に迫る小説です。

善良であることが必ずしも正義ではなく、傲慢さに見える自己主張が必要な時もあるーーそんな複雑さを抱えながら、人は誰かと生きていくのだと思わされました。

恋愛や結婚に悩んでいる人、婚活に行き詰まっている人はもちろん、自分自身の「生き方」を見直したいときにもおすすめできる一冊です。

読み終えたあと、きっとあなた自身の結婚観や人間関係に対する考え方に新しい気づきが生まれるはずです。

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