あなたには、自分よりも好きになった人はいますか?
「大人になれば、きっとすべてがうまくいく」
そんなふうに思っていたのに、現実はそう簡単ではない。
20代の私が『僕たちは大人になれなかった』を読んで感じたのは、「大人になることへの違和感」は世代を超えて普遍的なのだということでした。
『僕たちは大人になれなかった』の概要
• 著者:燃え殻
• 出版社:新潮社
• 発売日:2017年
燃え殻さんのデビュー小説であり、瞬く間に多くの読者を惹きつけた作品です。
タイトルからして心を掴むこの本は、「あの頃の自分」を振り返るような物語でありながら、世代を超えて共感できる要素にあふれています。
あらすじ(ネタバレなし)
主人公は40代の男性。ある女性の名前をFacebookで見かけたことをきっかけに、過去を振り返り始めます。
・夢を追っていた若い日々
・燃えるような恋と、その喪失
・理想と現実の間で揺れる心
物語は淡々とした語り口で進んでいきますが、読者の胸を突くのは「心の奥に残り続ける痛み」の存在です。
印象に残った言葉
夢持たないと夢破れたりしないからお得ですけどね
夢を持つことの怖さを、冗談めかして語るこの一文。まだ夢を模索している私にとっても、妙にリアルに響きました。
人間は背中のリュックに何か入っていないと前に足が進まないようにできているのだ。荷物は軽い方がいい。だけど手ぶらでは不安過ぎるんだ
この比喩はすごく腑に落ちました。背負っているものがあるからこそ進める、でも重すぎても動けない。20代の今の自分にも当てはまる言葉です。
生きていると言葉なんかじゃ救われない事ばかりだ。ただその時に寄り添ってくれる人がひとりいれば、言葉なんておしまいでいい
きれいごとではなく、寄り添う人の存在を大切にしているところに共感しました。誰かがそばにいてくれることの価値を、改めて感じさせられます。
感想・考察
1. 「大人になれなかった」という普遍性
この物語が響くのは、年齢や世代に関係なく「大人になりきれない自分」を抱えている人が多いからだと思います。
私はまだ20代ですが、すでに「思っていた大人像と違うな」と感じる瞬間はあります。
だからこそ、40代の主人公の言葉や記憶が、自分の未来の姿のようにも映りました。
2. 恋愛の喪失と時間の残酷さ
物語の核にあるのは、消えない恋の記憶。
「忘れたいけど忘れられない」「時間が経っても心の中で生き続ける人」がいる、その感覚は世代を問わず理解できるものです。
若い世代が読んでも、自分自身の恋愛や人間関係に重ねられるはずです。
3. 22歳から見た「90年代の描写」
私はリアルタイムで90年代を知りません。
けれど作中に出てくる街や音楽の描写は、「知らないはずなのに懐かしい」と感じさせる不思議な力を持っていました。
それは、細部に描かれた「空気感」が普遍的だからだと思います。
4. 読後に残る問いかけ
読んでいて一番強く感じたのは、
「大人になるって、結局どういうことなんだろう?」という問いでした。
きっと答えは一つではなく、誰もが迷いながら探していくもの。
その不完全さを肯定してくれるような優しさが、この作品にはあります。
『僕たちは大人になれなかった』はどんな人におすすめ?
• 大人になることに迷いや不安を抱いている人
• 失った恋や後悔の記憶を抱えている人
• 等身大の物語やリアルな感情描写が好きな人
・エモい雰囲気が好きな人
まとめ
『僕たちは大人になれなかった』は、世代を超えて読める物語です。
90年代を知らなくても、
「理想と現実の間で揺れる気持ち」や「大人になりきれない痛み」は、今を生きる私たちにも重なります。
読み終えたあとに残るのは、切なさだけでなく、
「未完成のままでもいいのかもしれない」という小さな救い。
20代の私にとっても、この作品は「未来への不安を少し受け止めてくれる本」でした。


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